「パワートゥザエッジ」を読んだ
「なぜ組織がアジャイルに向かうのか」についての洞察を得るために「パワートゥザエッジ」を読みました。
個人的に興味を持ったところをまとめています。
パワートゥザエッジ―ネットワークコミュニケーション技術による戦略的組織論
- 作者: デヴィッド・S.アルバーツ,リチャード・E.ヘイズ,安田浩,苑田義明,五太子政史,PTE研究会
- 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
- 発売日: 2009/03/01
- メディア: 単行本
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指揮統制(C2)
指揮統制(Command and Control:C2)は6つの型に分類することが出来る。
- 周期型
- 定期的なスケジュールに基づいて中央から詳細な命令を発する
- 割り込み型
- 不定期に中央から詳細な命令を発する
- 周期型より強力な通信能力が求められる
- 問題解決型
- 作戦レベルの司令部が軍の各構成要素に対して、目的を規定することに注力する
- 上級の司令官の付与した制約の範囲内で「革新性と柔軟性」を発揮することができる
- 問題提示型
- 命令は問題解決型同様に目的を中心に組み立てられるが、より少ない指標と制約
- 任務は部下に対して問題として与えられ、それをどうやって解決すべきかについては極力詳細を提示しない
- 選択的統制型
- 非常に有能な部隊を提供して、大まかな任務を与える
- 基本的には部下が十分に能力を発揮できるようにサポート役に徹する
- 状況をモニタリングし必要に応じて介入する
- 無統制型
- 戦域司令官の主要な役割は軍の支援をすること、すなわち任務達成の可能性を最大化し、勝利のために軍が必要とする情報と軍備を提供する
NCWの理念の採用により、自己同期化された部隊や行動の実現が可能になるが、混乱を避けるためには以下の前提条件を備える必要がある。
- 明確かつ一貫した指揮意図の理解
- 高品質の情報および共通の状況認識
- 部隊の全レベルでの能力
- 情報、部下、上官、同胞および機器への信頼
工業化時代の組織
工業化時代の組織の特徴としては以下があげられるが、これらの特徴は工業化時代のコミュニケーションの制約に依存していた。
- 特徴
- 分業
- 専門化
- 階層化組織
- 最適化
- 調停
- 統合計画
- 相互干渉の回避
コミュニケーション
- プッシュ型アプローチ
- 誰がどんな情報を求めているかを配信する側が知っておく必要がある
- プル型アプローチ
- どこで情報が得られるかさえ明確であれば、情報を求めている側が自律的に取得しに来る
工業化時代から情報化時代へ
役割の変化
- 広い分野に存在する潜在的脅威への対応
- 民間組織や非政府組織(NGO)との連携
求められる資質
- 相互運用性:協業がしやすい仕組み(誰が参加するかということに対して柔軟)
- 非軍事的パートナーとの協業
- 俊敏性:効率よい学びにより不確実性に柔軟に対応する
- 状況を理解する能力
- 状況に対応するための適切な手段の所有
- 適時的に応答する手段を統合運用する能力
それを支える技術
- 通信技術の向上
- 組織の末端(エッジ)が力を持つことが可能となってきた
パワートゥザエッジ(PTE)
PTEは「エッジの主体に強いパワーを持たせることと、独自の権限を持った組織を増やすことにより、組織やシステムのパワーを増大させることができる」とする考え方。
PTEの考え方を指揮統制およびその情報基盤に適用したとき、軍事組織は工業化時代の欠点を克服し、成功に必要な相互運用性および俊敏性を獲得することができる。
PTEが実現された組織の例として、「エッジ型組織」ではすべての構成要素に情報が与えられ、当然の行動を取る自由も与えられる。
階層型組織とエッジ型組織
階層構造が中心にパワーを保持しようとするのに対し、エッジ型組織はエッジにパワーを移動する。
階層型組織は既知の状況と任務行為においては非常に優れているが、未知の場合には非常に制限されることになる。
階層型組織 | エッジ型組織 | |
---|---|---|
指揮 | 指示する | 状況を整える |
リーダーシップ | 地位による | 能力による |
統制 | 指示による | 属性に現れる |
意思決定 | 組織が行う | 全員が行う |
情報 | 蓄積する | 共有する |
主な情報の流れ | 垂直、指揮に伴う | 水平、指揮からは独立 |
情報管理 | プッシュ | 発信して、必要なものを選ぶ |
情報源 | 少人数に集中 | 取捨選択、市場に適合的 |
組織プロセス | 指示される、線形 | 動的、並行的 |
エッジの個人 | 強制される | 権限を与えられる |